【通関士】外為法の基礎と過去問分析

通関士試験通関士

どうも。ケニー(ケニー🚢第58回通関士試験チャレンジ中)です。このシリーズでは、通関士試験に合格するための知識や攻略法について、受験生目線でアウトプットしています。

通関士試験指導「みこ会」メンバーです。好きなお寿司のネタは、〆サバです。

今回から、2回にわたり、関税法で出題される外為法をお届けします。

関税法における外為法は出題範囲がとても広く、試験対策の勉強がし辛いと有名です。

「外為法は捨て問!」とも言われますが、せめて過去問ぐらいは理解しておきたいものです。

今日は「外為法の基礎と過去問分析」です。

今日のアジェンダ

  • 外為法の基礎
  • 過去問の傾向(輸出の許可及び承認)
  • 過去問の傾向(輸入の承認)

外為法の基礎

通関士試験範囲のおさらいです。

3科目に分かれていますが、網羅している法律などを整理すると、このようになっています。 

外為法は、以下の3項目が試験範囲となっています。 

外為法第6章「外国貿易」

外為法は、国際的な社会の平和や安全を維持するため、そして経済が発展するために、外国為替(通貨)や外国貿易について定めています。

とても範囲が広いですが、通関士試験の対象となるのは、第6章の「外国貿易」部分です。

外為法の目的を果たすため、我が国では、経済産業大臣が「輸出の許可と承認」そして「輸入の承認」を行っています。 

輸出・輸入貿易管理令

輸出や輸入貿易管理令は、外為法に基づいて、国際貿易に関する規定を実施するために定められた法律(法令)です。

さきほどの経済産業大臣による輸出の許可と承認、または輸入の承認は、この貿易管理令に基づいています。

過去問対策

どういうものが許可や承認が必要なのか、また特例として許可や承認が必要ないのか、過去問から学んでみたいと思います。

次の章で、第57回から第45回までの、過去問を分析してカテゴリ分けをしてみました。

また、出題頻度も調べてみました。出題頻度が★★★の項目については、必ず得点できるようになりたいものです。

本試験では、輸出と輸入の2種類に分かれて出題されます。

過去問の傾向(輸出の許可及び承認)

まずは、輸出からです。重要文化財有効期間の延長は、本試験で繰り返し出題されています。

以下の4つに分類してみました。

  1. 物品および輸出対象物に関する出題
  2. 別表に関する出題
  3. 罰則および有効期間に関する出題
  4. その他(修理品の再輸出や委託加工貿易など)に関する出題

※以下の品目は「別表第1~(省略)~中欄」を省略しています。

  • 軍用航空機の部品、第95類の玩具、核燃料物質、無人航空機

※以下の品目は「別表第2~(省略)~中欄」を省略しています。

  • うなぎの稚魚、重要文化財、ダイアモンド、核燃料

物品および輸出対象物に関する出題

出題頻度★★★

  • 第57回第14問:重要文化財 → 要承認
  • 第53回第26問:重要文化財 → 要承認
  • 第49回第25問:重要文化財 → 要承認
  • 第46回第14問:重要文化財 → 文化財保護法による輸出の許可ではない
  • 第55回第14問:ダイアモンド → 要承認(国際郵便、個人的使用、輸出の承認の特例であるのだが)
  • 第52回第12問:ダイアモンド → 要承認(国際郵便、個人的使用、輸出の承認の特例であるのだが)
  • 第53回第26問:ダイアモンド → 要承認(200万円以下、無償の商品見本、輸出の承認の特例であるのだが)
  • 第54回第25問:核燃料物質 → 許可を受けていても要承認
  • 第52回第12問:核燃料物質 → 許可を受けていても要承認
  • 第47回第29問:核燃料物質 → 許可を受けていても要承認

出題頻度★★☆

  • 第57回第14問:うなぎの稚魚と5万円とアメリカ → 5万円以下なら承認は不要
  • 第54回第25問:うなぎの稚魚と30万円 → 5万円以下なら承認は不要

出題頻度★☆☆

  • 第50回第28問:有害廃棄物と韓国 → 要承認
  • 第50回第28問:万年筆と北朝鮮 → 要承認
  • 第50回第28問:一時出国者の象牙製品 → 要承認

別表に関する出題

出題頻度★★★

  • 第57回第14問:別表第1の1の項の中欄の貨物と無償輸出 → 要許可
  • 第54回第25問:別表第1の1の項の中欄の貨物と自己の用に供する船用品 → 要許可
  • 第51回第28問:別表第1の1の項の中欄の貨物と自己の用に供する船用品 → 要許可
  • 第53回第26問:別表第1の1の項の中欄の貨物と一時出国者の携帯品 → 要許可
  • 第51回第28問:別表第1の1の項の中欄の貨物と一時出国者の武器・鉄砲 → 要許可
  • 第55回第14問:別表第1の1の項の中欄の貨物と仮陸揚げと「船荷証券による本邦以外の仕向け地」 → 要許可
  • 第52回第12問:別表第1の1の項の中欄の貨物と仮陸揚げと「船荷証券による本邦以外の仕向け地」 → 要許可
  • 第52回第12問:別表第1の1の項の中欄の貨物と財務大臣の輸出 → 要許可
  • 第49回第25問:別表第1の1の項の中欄の貨物と国際郵便 → 要許可

出題頻度★★☆

  • 第56回第27問:別表第1の4の中欄(無人航空機)と100万円とアメリカ → 要許可
  • 第48回第28問:別表第1の4の中欄と100万円以下とアメリカ → 要許可

  • 第56回第27問:仮陸揚げした無人航空機と「船荷証券による本邦以外の仕向け地」 → 許可不要
  • 第48回第28問:仮陸揚げ品と「船荷証券による本邦以外の仕向け地」 → 許可不要
  • 第46回第14問:別表第1の中欄と100万円(を除き)とアメリカ → 許可不要

  • 第47回第29問:別表第1の16の中欄 → (アメリカなら)許可不要
  • 第56回第27問:別表第1の16の中欄(第95類の玩具) → (アメリカなら)許可不要
  • 第57回第14問:別表第1の16の中欄(第95類の玩具) → (ドイツなら)許可不要

出題頻度★☆☆

  • 第46回第14問:別表第2の中欄 → 承認不要
  • 第45回第29問:別表第2の中欄 → 承認不要

罰則および有効期間に関する出題

出題頻度★★★

  • 第52回第12問:有効期間の延長の権限 → 税関長に委任される
  • 第48回第28問:有効期間と延長 → 全て税関長に委任されるわけではない
  • 第47回第29問:有効期間 → 6カ月
  • 第55回第14問:有効期間と延長 → 6ヶ月と異なる有効期間設定と延長が可能
  • 第54回第25問:有効期間と延長 → 6ヶ月と異なる有効期間設定と延長が可能
  • 第53回第26問:有効期間と延長 → 6ヶ月と異なる有効期間設定と延長が可能
  • 第51回第28問:有効期間と延長 → 6ヶ月と異なる有効期間設定と延長が可能
  • 第49回第25問:有効期間と延長 → 6ヶ月と異なる有効期間設定と延長が可能

出題頻度★★☆

  • 第57回第14問:輸出の許可違反の罰則 → 3年間の輸出禁止
  • 第54回第25問:輸出の許可違反の罰則 → 3年間の輸出禁止
  • 第46回第14問:輸出の許可違反の罰則 → 3年間の輸出禁止
  • 第56回第27問:輸出の許可と承認 → 許可も承認も必要
  • 第50回第14問:輸出の許可と承認 → 許可も承認も必要

出題頻度★☆☆

  • 第49回第25問:輸出の承認の権限 → すべては税関長に委任されていない
  • 第46回第29問:NACCSによる輸出の許可の申請 → NACCSで可

その他(修理品の再輸出や委託加工貿易など)に関する出題

出題頻度★★☆

  • 第55回第14問:修理品の有償再輸出 → 要許可(無償なら不要)
  • 第51回第28問:修理品の有償再輸出 → 要許可(無償なら不要)
  • 第55回第14問:MADE IN JAPANと類似表示 → 要承認
  • 第53回第26問:MADE IN JAPANと類似表示 → 要承認
  • 第56回第27問:別表第2の中欄の貨物および水産庁長官の確認済 → 要承認
  • 第49回第25問:財務大臣による輸出 → 要承認

出題頻度★☆☆

  • 第51回第29問:委託加工貿易 → 1年以内の再輸入は承認不要
  • 第47回第29問:委託加工貿易 → 承認不要(加工の内容に関わらずというのは誤り)
  • 第51回第28問:ATAカルネ → 基本的に承認は不要だが、貨物の種類に関わらずというならば要承認

輸出のまとめ

輸出に関する過去問では、重要文化財別表に掲げられた物品など、特定の物品に関する輸出規制が頻出のテーマです。

また、輸出の許可有効期間の延長に関しても頻繁に問われています。

さらに、修理品の再輸出委託加工貿易といった特殊な輸出形態もよく出題されるため、例外的なケースについても理解を深めておきましょう。(解説は次回お届けします)

過去問の傾向(輸入の承認)

次に、輸入です。輸入割当て政府機関による輸入承認輸入の承認の有効期間に関する出題が多く見られます。

以下の4つに分類してみました。

  1. 輸入割当て
  2. 輸入の承認の有効期間と延長
  3. 政府機関による輸入と関連法規
  4. その他のテーマ(無償の貨物や水産動植物など)

輸入の方が出題数が少ないですが、頻出問題以外は個別のテーマが多く、難易度が高いです。

輸入割当てに関する出題

輸入割当ては、国際貿易で特定の物品に対して課される数量制限や、政府の割当て制度に関連して頻出しています。

特に、輸入割当ての条件や有効期間に関する知識が求められます。

出題頻度★★★

  • 第56回第14問:輸入割当て → 要承認
  • 第52回第27問:輸入割当て(18万円以下の有償品) → 要承認(無償なら承認不要)
  • 第56回第14問:輸入割当て → 条件付与できる
  • 第50回第29問:輸入割当て → 条件付与できる
  • 第46回第29問:輸入割当て → 条件付与できる
  • 第57回第26問:輸入割当て → 数量と価格による
  • 第55回第25問:輸入割当て → 数量と価格による
  • 第53回第27問:輸入割当て → 数量と価格による
  • 第52回第27問:輸入割当て → 数量と価格による
  • 第49回第26問:輸入割当て → 数量と価格による
  • 第55回第25問:輸入割当てを受けた → 要承認
  • 第53回第27問:輸入割当てを受けた → 要承認
  • 第52回第27問:輸入割当てを受けた → 要承認
  • 第51回第29問:輸入割当てを受けた → 要承認
  • 第57回第26問:経済産業大臣の確認を受けた後の輸入委託者への輸入割当て → 承認不要
  • 第53回第27問:経済産業大臣の確認を受けた後の輸入委託者への輸入割当て → 輸入割当て不要
  • 第51回第29問:経済産業大臣の確認を受けた後の輸入委託者への輸入割当て → 輸入割当て不要
  • 第54回第14問:水産動植物の輸入割当て → 要承認
  • 第54回第14問:水産動植物の輸入割当て → 輸入割当て不要
  • 第52回第27問:水産動植物の輸入割当て → 輸入割当て不要
  • 第55回第25問:船舶の事故による積戻し品の輸入割当て品 → 輸入割当て不要
  • 第53回第27問:船舶の事故による積戻し品の輸入割当て品 → 輸入割当て不要

出題頻度★★☆

  • 第50回第29問:輸入割当てを受けており仮陸揚げ → 承認不要
  • 第46回第29問:輸入割当てを受けており仮陸揚げ → 承認不要

出題頻度★☆☆

  • 第57回第26問:輸入割当証明書 → 輸入割当を希望しなくなったら経済産業大臣に要返還

輸入の承認の有効期間と延長に関する出題

輸入の承認の有効期間や輸入承認証は、貨物の取り扱いに重要な要素です。

これに関する知識は頻繁に出題されており、特に、理解することが大切です。

出題頻度★★★

  • 第51回第29問:有効期間 → 6ヶ月
  • 第56回第14問:有効期間と延長 → (特に必要があると認めるとき)1か月以内の延長可
  • 第49回第26問:有効期間と延長 → (特に必要があると認めるとき)1か月以内の延長可
  • 第54回第14問:有効期間と延長 → 6ヶ月と異なる有効期間設定と延長が可能

出題頻度★★☆

  • 第56回第14問:輸入承認証 → 期間内に要申告
  • 第55回第25問:輸入承認証 → 有効期間が満了しても提出不要
  • 第50回第29問:輸入承認証 → 有効期間内に申告しないと輸入できない
  • 第49回第26問:輸入承認証 → 経済産業大臣は輸入承認証を必要としなくなったら提出を求めることができる

出題頻度★☆☆

  • 第54回第14問:外為法違反の罰則 → 輸入禁止措置
  • 第53回第27問:輸入の承認の条件 → 条件は変更可能
  • 第48回第29問:輸入の承認の権限の委任 → 税関長に委任されている(条件を付する権限も)
  • 第50回第29問:有償の貨物の承認の権限 → 税関長に委任されていない

政府機関による輸入と関連法規に関する出題

政府機関が輸入に関わる場合、経済産業大臣の輸入の承認が必要なのかどうかです。

出題頻度★★☆

  • 第54回第14問:政府機関による輸入 → 承認不要(他の大臣は要協議)
  • 第51回第29問:政府機関による輸入 → 承認不要(他の大臣は要協議)
  • 第48回第29問:政府機関による輸入 → 承認不要(他の大臣は要協議)
  • 第48回第29問:政府機関による輸入 → 税関の確認は免除されていない

その他のテーマに関する出題

その他、輸入に際して特別な承認や確認を要する物品に関する出題も少なくありません。

出題頻度★☆☆

  • 第56回第14問:無償の貨物 → 承認に条件を付与
  • 第55回第25問:無償再輸入品の有害廃棄物 → 承認不要
  • 第52回第27問:無償再輸入品の絶滅危惧種 → 承認不要
  • 第54回第14問:仮陸揚げ → 承認不要
  • 第48回第29問:採捕した水産物 → 承認不要
  • 第48回第29問:船舶事故による積戻し → 承認不要
  • 第50回第29問:けしの実 → 輸入承認証ではなく熱処理証明証の提出
  • 第49回第26問:一時入国者に関する輸入 → 「すべて」承認不要というのは誤り
  • 第49回第26問:税関による輸入の承認の確認の経済産業大臣への通知 → そんな規則はない

輸入のまとめ

輸入の承認に関する過去問では、「輸入割当て」「有効期間の延長」が頻出となっています。

また、政府機関による輸入が行なわれると経済産業大臣の輸入の承認が必要なのか、一通り押さえておきましょう。(解説は次回お届けします)

まとめ

以上で、外為法の基礎と過去問分析をお届けしました。

分析して思ったのは、輸出全般輸入の頻出問題ははなんとか得点しましょう。

輸入の個別問題は、ちょっとむずかしいかもしれませんね。

択一式で出題頻度★★★が出るとラッキーなのですが、その辺はバランスよく作成してくるでしょう。楽しみです。

次回は、「外為法を落とさない!」をお届けします。

おまけ1(過去問問題用紙)

過去問を解いてみたい方はこちらのスレッドからどうぞ。 
https://twitter.com/KennyCustoms58/status/1835107039955341582

おまけ2(過去問データベース)

出題回出題範囲出題タイトル
第57回第14問輸出の許可及び承認うなぎの稚魚とアメリカ、重要文化財、軍用航空機の部品、第95類の玩具、輸出の許可の罰則
第57回第26問輸入の承認輸入割当て、輸入割当証明書
第56回第14問輸入の承認輸入割当て、無償の貨物、有効期間と延長、輸入承認証、輸入割当て
第56回第27問輸出の許可及び承認輸出の許可と承認、水産庁長官の確認、航空無人機と100万円とアメリカ、第95類の玩具とアメリカ
第55回第14問輸出の許可及び承認別表第1の1の項の中欄の貨物と仮陸揚げ、修理品の有償再輸出、有効期間、ダイアモンド、MADE IN JAPANと類似表示
第55回第25問輸入の承認輸入割当て、 輸入承認証
第54回第14問輸入の承認有効期間、承認の公表と仮陸揚げ、政府機関による輸入、水産動植物の輸入割当て、外為法違反の罰則
第54回第25問輸出の許可及び承認輸出の許可違反の罰則、別表第1の1の項の中欄の貨物と自己の用に供する船用品
第53回第26問輸出の許可及び承認有効期間と延長、MADE IN JAPAN、重要文化財、ダイアモンド、鉄砲
第53回第27問輸入の承認輸入割当て、輸入の承認の条件、航空機の事故による積戻し
第52回第12問輸出の許可及び承認ダイアモンド、別表第1の1の項の中欄の貨物と仮陸揚げ、核燃料、有効期間の延長の権限
第51回第28問輸出の許可及び承認一時出国者の鉄砲、自己の用に供する船用品、有効期間と延長、修理品の再輸出、ATAカルネ
第51回第29問輸入の承認政府機関による輸入、委託加工貿易、輸入割当て、有効期間と延長
第50回第28問輸出の許可及び承認一時出国者の象牙製品、有害廃棄物、輸出の許可と承認、万年筆と北朝鮮
第50回第29問輸入の承認けしの実、輸入割当品の仮陸揚げ、輸入の承認の権限、輸入承認証、輸入割当て条件
第49回第25問輸出の許可及び承認別表第1の1の項の中欄と国際郵便、重要文化財、財務大臣による輸出、輸出の承認の内容の訂正と変更、有効期間の延長
第49回第26問輸入の承認一時入国者、確認と結果、輸入割当て、有効期間と延長、輸入承認証
第48回第28問輸出の許可及び承認別表第1の中欄と100万円とアメリカ、別表第1の中欄と仮陸揚げと韓国、別表第2の中欄、旅客の携帯品、有効期間の延長
第48回第29問輸入の承認輸入割当て、政府機関による輸入、採捕した水産物、条件付与権限、船舶事故の積戻し
第47回第29問輸出の許可及び承認別表第1の1の項の中欄の貨物と仮陸揚げ、核燃料物質、別表第1の中欄とアメリカ、委託加工貿易、有効期間
第46回第14問輸出の許可及び承認別表第1の中欄と100万円とアメリカ、重要文化財、別表第2の中欄、NACCSによる輸出の許可の申請、輸出の許可違反者への罰則
第45回第29問輸出の許可及び承認仮陸揚げ、有効期間の延長、一時出国者の絶滅危惧種、別表第2の中欄、有効期間の延長

このシリーズの目次 第57回

このシリーズの目次 第58回

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