どうも。ケニー(ケニー🚢第58回通関士試験チャレンジ中)です。このシリーズでは、通関士試験に合格するための知識や攻略法について、受験生目線でアウトプットしています。
通関士試験指導「みこ会」メンバーです。好きなお寿司のネタは、ホタテ耳です。
今日は単発で、価格按分の理解と試験対策をお届けします。通関士試験というより算数の回です。
今日のアジェンダ
- 按分とは
- 出題されるパターン
- 按分の計算方法
按分とは
「按分(あんぶん)」とは、全体を基準となる数量に比例して分けること(by goo辞書)です。
ロト6などの宝くじは、1等2億円ですが、当選者が10人いたばあいは、1人2000万円として2億円を按分して、受け取ることになります。
また、ライブ会場の警備員を100人雇用し、警備員の輸送バスとして20万円を負担した。では1人当たりの輸送バス費用はいくらか、これも按分になります。
この按分の概念の理解が、通関士に求められます。
実際に出題される申告書問題などを取り上げながら、按分をマスターしましょう。
計算式が登場しますが、算数や数学が苦手なわたしでも分かるように書いています。安心して読んでください!
通関士試験で出題される按分
通関士試験では、按分が数多く出題されます。
輸出や輸入時の運賃や保険料
輸出であれ輸入であれ、インボイス価格とは別に運賃や保険料が明記されることがあります。
輸出申告でよくあるのが、「インボイス価格はCIF価格で、輸出港から輸入港までの運賃(保険料含む)が明記されている」パターンです。
※今回の記事では、保険料は省略しています。
以下の例では、それぞれの品目価格から8%を引いた金額がFOB価格です。計算式はかんたんですが、これも按分です。
輸入申告でよくあるのが、「インボイス価格はFOBで、輸出港から輸入港までの運賃が明記されている」パターンです。
以下の例では、運賃$160を、それぞれの品目に按分して、CIF価格を割り出す必要があります。(後で詳しく解説します。)
輸入品の生産における物品または役務の提供
輸入車の生産に必要なエンジンを買い手として無償提供するが、その特許使用料に1億円掛かった。しかし、今回の輸入品では、100万個生産したうち50万個しか輸入しない。というばあいは、5,000万円しか課税価格に算入されません。
これは、「他の貨物との按分」としてブログも書いてますので、読んでみてください。 https://tgg.jugani-japan.com/tsujike/2024/06/custom2_7/#toc9
その他の出題例
その他を上げれば枚挙にいとまがありません。
第57回実務12問では、特許権の使用に伴う対価として一時金90万円を払うが、6回に分けて輸入する按分の理解を問われています。
まぁ、「全体を基準となる数量に比例して分ける」と考えると、さほどむずかしくないのかなと思います。
「運賃と保険料」や「特許権使用料」のように、一括して払うものは、そう多くないからです。
ただし、インコタームズや課税価格の決定を理解していることが前提です。基礎を固めましょう。
按分の計算方法
それでは最後に、運賃と保険料の按分の解き方を使って、按分の計算方法を整理してみましょう。
差分ではなく結果を求める
以下は、輸入申告問題で、インボイスではFOB価格が提示されていて、海上運賃のTotalが与えられている例です。
海上運賃$160を、それぞれの品目に按分しなければなりません。
ここでポイントなのが、個別運賃のx、y、zを求めるのではなく、結果であるA’、B’、C’を求める、ということです。
もちろん、「x, y, zを求めてから、FOB価格に足す」という考え方で合っています。
少しでも試験時間を短縮するために、「差分ではなく、結果を求める」ということを意識しましょう。
結果を求めるために、重要なことは、「結果のTotalを意識しておく」ということです。
課税価格に加算する費用は先に
先ほどに続いてですが、課税価格に加算されるロイヤリティや、原材料取得の為の費用なども、先に結果に加算してCIF価格を出しておきましょう。
これは、あくまで試験対策の話です。実際の通関業務では、必ずこのような計算をしなければならない訳ではありませんのでご了承ください。
なぜ試験対策として、CIF価格のTotalを先に出しておくかというと、按分結果がちょうど割り切れるように問題が作成されているから、です。
先に運賃だけを仕入れ価格で按分して~とやってしまうと、小数点以下が発生して割り切れない問題で転んでしまいます。
「CIF価格のTotalを意識する」と楽に解けると思います。
さて、CIF価格のTotalを出したあとは、いろいろな解き方があり、正解はありません。ご自身の得意な方法や慣れている方法でいいと思います。
わたしは、以下の2種類の方法をオススメします。
- 比例を使う
- 按分係数を求める
比例を使う
まず、比例(ひれい)です。
100:200:500の合計が800であることと、A’:B’:C’の合計が960になることの、比率は同じです。
比率は、このようにイコールで表現できましたよね。
この比率は、分数で表現できます。
A’を求めるために、両項に800と960を掛けます。
あとは、A’を求めるために、掛けたり割ったりしますが割愛します。
A’は$120であることが求められました。同様に、B’とC’も計算できます。
何度も言いますが、海上運賃が$160だから~と迷っていると、時間ロスします。大切なのは、800∔160=960のCIF価格を準備しておくことです。
按分係数を求める
上記の比率を理解している方は、「どの品目も倍率や増加率は同じ」ということが感覚的に分かると思います。
この、均等に分配するための係数を、按分係数(あんぶんけいすう)と呼びます。
按分係数は、CIF価格をFOB価格で割った値です。
なぜこうなるかというと、FOB価格に海上運賃に必要な係数を掛けたらCIFになるから、という解説でいかがでしょうか。
これは算数の話であって、もっと分かりやすい説明方法があるかもしれませんが。。。
按分係数を、それぞれの品目のFOB価格に掛けると、CIF価格が計算できます。(図は割愛します)
まとめ
以上で、価格按分の理解と試験対策をお届けしました。
今回取り上げた按分以外にも、「重量で按分する」や「特恵関税対象品目で按分する」というパターンがあるようです。
しかしながら、まずは輸入申告の按分問題を落とさないように、基礎を固めましょう。
ゼロ申(按分問題が好き)では、以下のような出題があります。
インコタームズがDAPなので、総額に輸入港到着後の輸送運賃が含まれているパターンです。
これも、運賃$160を、それぞれの品目に按分して、CIF価格を割り出す必要があります。
そして、実際の通関実務では、割り切れないばあいどうするのか、現役通関士に聞いたところ・・・
「NACCSが自動計算するので、通関士が計算することはない」とのことでした。そうなんですね知らなかった。
また、学習を続けて発見した按分問題があれば、改編したいと思います。
参考資料
Special Thanks ぐちさん
このシリーズの目次 第57回
- 【通関士】資格勉強の学習計画
- 【通関士】行政と行政手続
- 【通関士】内閣大臣と大忙しの税関長
- 【通関士】税関長による行政処分
- 【通関士】通関士の役割と税関長の許可・承認
- 【通関士】通関書類の作成および通関実務の学習ポイント
- 【通関士】課税標準と端数処理
- 【通関士】関税額の計算の基本と応用
- 【通関士】修正申告と更正と延滞税と過少申告加算税
- 【通関士】貨物の品目分類とHS条約
- 【通関士】関税率表の解釈に関する通則と所属の決定
- 【通関士】貿易と船と海の話
- 【通関士】輸入時の関税納付のポイント(全体像編)
- 【通関士】課税物件確定の時期と適用法令
- 【通関士】納税義務
- 【通関士】延滞税の免除と軽減措置
- 【通関士】原産地規則の適用と手続
- 【通関士】原産地規則の実質的変更基準