どうも。Kenny(tsujikenzo)です。このシリーズでは、 第57回通関士試験の合格を目指す 「【通関士】通関士をめざして2023」 をお送りしております。学習のアウトプットをしています。
今日は11回目です。通関士試験指導「みこ会」メンバーです。好きな食べ物は、お寿司です。
前回のふりかえり
前回は、【通関士】貨物の品目分類とHS条約、をお届けしました。
今回は、【通関士】関税率表の解釈に関する通則と所属の決定、をお届けしします。
今日のアジェンダ
- 関税率表の解釈に関する通則
- 適用上の優先順位
- 関税率表の所属の決定
関税率表の解釈に関する通則
「関税率表の解釈」というのは、貨物にどの税率を適用すればいいのか、関税率表を見て判断できる状態になる、ということです。
そんなの、前回の記事でやった「関税率表解説」や「分類例規」を見て決めるんじゃないですか、と思っていました。わたしは。
しかし、国際貿易で取引される多種・多様な物品のすべてを部、類及び節の表題に含める、そして、特定して列挙することは、およそ不可能です。
ですので、そんなときに関税率表の所属を決定する税表分類の基本となるものが、関税率表の解釈に関する通則です。
通則は全部で6つあります。まずは、全体を眺めて見てみましょう。
適用上の優先順位
関税率表の品目の項(4ケタ)を決定するための通則を適用するには、優先順位があります。
まず、通則1が大原則として当てはまって、次に通則2、通則3、という感じです。
通則1
通則1は、関税分類の大原則です。
それは、「ほとんどの品目は、通則1の表題で所属を決定するんだけど、すべての物品を表題で表現するのは不可能なので、あくまで部や類の表題には、法的根拠はないよ。項の規定、およびこれに関係する部または類の注の規定に従って、4桁ベースの所属を決定してくださいね。これには法的根拠があるよ。」ということです。
例題です。
ほとんどの物品は、部や類および節の表題で、所属を決定しているようです。「割り箸」や「木製衣類用ハンガー」などは、44類です。
しかし、表題は参照上の便宜のために設けたものなので、あくまで項や類の注(規定)で決めなさいよ、ということです。
通則2(a)
「2輪車はイス外しても完成品」という語呂合わせがあります。つまり、サドルのような部品を外したものでも、「自転車」にはかわりないという通則です。
通則2(b)
二以上の材料または物質を混合し、または結合した物品の所属は、主たる材料・物質が所属の決定ですよ、という通則です。
しかし、「どっちも主だよね」という物質が問題なのです。そういう時は、次の通則3で決めよう、ということです。
通則3(a)
二以上の材料や物品からなる所属の決定は、特殊な限定をしている項が優先する、という通則です。
たとえば、「自動車用のじゅうたん」は、自動車の付属品(第87.08項)なのか、じゅうたん(第57類)なのか、という決定です。
どちらが特殊な限定をしているかというと、自動車の付属品というより、じゅうたんと言ったほうが、商品を限定しています。
なので、じゅうたん(第57類)に所属する、ということです。
通則3(b)
「賛美する重要特性、スパゲッティ」という語呂合わせがあります。重要な特性を持っているものが、所属の決定になるという通則で、たとえば、「スパゲッティのセット」を輸入するばあいは、スパゲッティ、チーズ、トマト、包装紙などが構成要素としてあったばあい、スパゲッティが分類の決定になる、ということです。
通則3(c)と通則4
税関の資料で、「この規定を適用することはほとんどない」とのことでした(近年の試験では、3cによる所属の決定まで問われる問題が出題されているようです。ご指摘ありがとうございます。)ので、説明は割愛します。
項の決定については、通則3までで分類できるように規定されているそうです。
通則5
これは、試験にも出る通則です。
(a)は、いわゆる専用容器が特定の条件を満たしていれば、収納する本体と一緒に、本体のHSコードで分類されるという規定です。
(b)は、ダンボール箱のような包装容器は、反復使用するものを除き個別で考えることなく包装する本体と一緒に本体のHSコードで分類されるという規定です。逆に、圧縮ガス用または液化ガス用の鉄鋼製のドラムまたは容器などは、反復使用に適することが明らかな包装材料および包装容器ということで適用しません。
通則6
通則1~5は、HSコード4ケタである項を決めるさいの規定ですが、HSコードの5ケタ目、6ケタ目の号を決めるさいにも準用するという規定が、通則6です。
どの号に分類するかを決めるさいは、比較する桁数を5桁目なら5桁目同士、6桁目なら6桁目同士で比較します。
分類のポイント
自動車関連部品を例に、かんたんに見てみましょう。
自動車関連部品は、第17部「車両、航空機、船舶および輸送機器関連品」に所属します。ほとんどの物品は通則1で所属を決定するという意味です。
しかし、第17部注2(関税率表解説 第17部)には、次の物品は含みませんよという部注があります。
1つ例に挙げると、「(第15部)第82類の物品(工具)は含まない」とあります。これは、スパナ、レンチ、ドライバーなどの第82類の工具は自動車部品に含みませんよということです。
逆に、第15部の部注1にも、「第17部の物品(車両、船舶および航空機)は第15部(卑金属およびその製品)には含みませんよ」とあります。
自動車関連部品の相関図をまとめる(通則1レベル)と、このようになります。おもしろいですよね。(わたしだけ?)
関税率表解説の部注や号注は、試験問題別冊に掲載されますので、暗記する必要はありません。とは言えないかもしれません。(追記)
問題文や配布される別冊をよく読んで、品目の所属を決定しましょう。
関税率表の所属の決定
試験まで残り時間もあまりありませんので、効率よく、ポイントを絞って理解につなげていこうと思います。
問題を出す側としても「品目の分類、全部覚えてますか?」という出題をするわけはありません。
ポイントは、以下の2点だと思います。(必ずしもこうではありません)
過去問に出題された? | 問題の特徴 |
---|---|
されている | 暗記レベルも問う問題 |
されていない | 考えさせる問題 |
過去問を眺めながら、考察してみましょう
過去問の考察
2020年第54回
たとえば、2020年第54回には、以下のような問題が出題されました。
これは、以下のように正解を導きます。
- 第3類は、魚並びに甲殻類、軟体動物およびその他の水棲無脊椎動物
- 冷凍のアジやえび、塩蔵した2枚貝や魚の肝臓や水煮した甲殻類は第3類
- 乾燥した海藻は12.12項
- ただし、食酢により調製したにしんは、16類となる。なお、16類には3類に定める方法により調製した魚を含まないが(16類注1)、食酢による調製は3類に定められてないため、16類から除外されない。
という問題で、暗記が必要です。(はっきり言って激ムズです)
しかし、この問題のテーマは、2016年第50回の輸入申告問題になっており、過去問を解いた人にとっては、まるっきりの暗記問題でもなさそうです。
2018年第52回
2018年第52回の輸入申告では、「ポリエステル、ナイロン、ウール、カシミア繊維」が、どの類に属するかを知っておかなければいけない問題が出題されました。
しかし、この知識も、受験生の間ではメジャーな知識であり、知っている人と知らない人の差が少し出る問題だったようです。(全ての受験生に、21部97類の暗記能力を問う試験ではない、ということが言いたかったです)
過去問に出会ったら、品目表を眺めて、この部や類は、部注や類注を含めてなんとなくツボを抑えたなという状態にしたいものです。
「織物と編み物は両立しないので、knitted(メリヤス編み)なら61類!」という感じが、わたしなりのツボです。
語呂合わせで覚えるものではないかなぁと思いました。
まとめ
以上で、【通関士】関税率表の解釈に関する通則と所属の決定、をお届けしました。
本文中に登場する品目分類カードは、グリーンクレーン出版さんの【通関士試験2023年度版】統計品目カードです。
(結構いいお値段しますので)必ず合格して、良い投資だった!と言えるようにしたいです。
次回もお楽しみに。