どうも。ケニー(ケニー🚢第58回通関士試験チャレンジ中)です。このシリーズでは、通関士試験に合格するための知識や攻略法について、受験生目線でアウトプットしています。
通関士試験指導「みこ会」メンバーです。好きなお寿司のネタは、ホッキひもです。
前回のふりかえり
前回は、現実支払価格の買手が自己のために行う活動と保管、をお届けしました。
今回は、「売買契約と輸入取引における買手と売手」をお届けします。
課税価格の決定の原則において、輸入取引とは「本邦に拠点を有する者が、買手として貨物を本邦に到着させることを目的として売手との間で行った売買」であることを、学びました。
しかし、そもそも売買(売買契約)や買手と売手について、理解がぼんやりしていたので、解説したいと思います。
売買契約
輸出、輸入に限らず、売手と買手は売買契約を結びます。
売買契約は、以下のような取引条件を定めます。※暗記する必要はありません。
- 契約当事者
- 品質条件
- 数量条件
- 価格条件
- 貨物の受け渡し条件
- トラブルの対処条件
- 貿易条件(インコタームズ)
- 貿易運送条件
- 貿易保険条件
- 代金決済条件
これらは、事前に契約書を交わし、お互い納得した上で取引をしましょう、トラブルがあったときは契約に基づいて解決しましょう、というものです。
契約当事者
売買契約における契約当事者には、「本人」か「代理人」かの違いがあります。
「本人」とは、契約の実際の当事者であり、直接的な利益と義務を持つ個人または法人を指します。
一方、「代理人」は本人の指示に基づき、本人に代わって契約を結ぶ権限を持つ者です。
代理人は本人の名義で行動し、契約から生じる法的効果について本人が責任を負います。
現地販売店との契約は、本人対本人、現地販売代理店との契約は、本人対代理人、という契約当事者になります。
これは、あくまで売買契約のお話です。
では、輸入取引において、買手と売手はどのような関係なのでしょうか。
輸入取引における買手と売手
関税定率法基本通達4-1(輸入取引、買手及び売手の意義及び取扱い)では、輸入取引における「買手」とは、本邦に拠点を有する者であって、当該拠点において実質的に自己の計算と危険負担の下に売手との間で輸入貨物に係る輸入取引をする者、とされています。
一方で、「売手」とは、実質的に自己の計算と危険負担の下に買手との間で輸入貨物に係る輸入取引をする者、です。
具体的には、買手及び売手は、自ら輸入取引における輸入貨物の品質、数量、価格等について取り決め、瑕疵、数量不足、事故、不良債権等の危険を負担する者とされています。たとえば、外国法人の本邦事務所が名目上輸入貨物の買手とされている場合であっても、当該事務所が実質的に当該外国法人の計算と危険負担の下に当該輸入貨物の売買をしているような場合には、当該事務所は輸入取引における「買手」とはならないので留意する。とあります。
輸入取引における販売代理人や買付代理人
つまり、輸入取引における「買手」や「売手」というのは、売買契約における「本人」と同様の効力を持った者と言えます。
売買契約を、本人と代理人(たとえば現地販売代理店)で行い、「輸入取引における商品代金を半額にして関税額をチョロマカセようぜ」ということはできないのです。
なので、以下のようなばあい、課税価格に加算する・算入しない、という理解が必要なのです。
- 本邦における販売業務委託費用を、売手から販売代理人に支払うばあいは、課税価格に加算する
- 外国における買付業務委託費用を、買手から買付代理人に支払うばあいは、課税価格に算入しない
通関士試験では、「仲介業者」というのがよく出てきますが、買手として「仲介業者に商品代金として手数料を払えば関税額を免れるジャン」という脱税行為を阻止しています。
- 買手が負担する仲介手数料(20万円など)は、課税価格に算入する
- 売手が負担する仲介手数料(10万円など)は、課税価格に算入しない → 売手は手数料を商品代金に転嫁してるはずだから
まとめ
以上で、「課税価格を極めよう 売買契約と輸入取引における買手と売手」をお届けしました。
試験勉強では「代理人」とか「費用負担」などの用語がとくに頭に入ってこないですよね。当事者じゃないからなおさらです。
そんなときは、「悪い奴らはどんなことを考えるかなぁ」と想像するのも1つです。
何度も言及しますが、このブログは、法的な制限を回避、または悪用したり、納税を回避する行為を薦めるものでは決してありません。
次回もお楽しみに。
このシリーズの目次 第57回
- 【通関士】資格勉強の学習計画
- 【通関士】行政と行政手続
- 【通関士】内閣大臣と大忙しの税関長
- 【通関士】税関長による行政処分
- 【通関士】通関士の役割と税関長の許可・承認
- 【通関士】通関書類の作成および通関実務の学習ポイント
- 【通関士】課税標準と端数処理
- 【通関士】関税額の計算の基本と応用
- 【通関士】修正申告と更正と延滞税と過少申告加算税
- 【通関士】貨物の品目分類とHS条約
- 【通関士】関税率表の解釈に関する通則と所属の決定
- 【通関士】貿易と船と海の話
- 【通関士】輸入時の関税納付のポイント(全体像編)
- 【通関士】課税物件確定の時期と適用法令
- 【通関士】納税義務
- 【通関士】延滞税の免除と軽減措置
- 【通関士】原産地規則の適用と手続
- 【通関士】原産地規則の実質的変更基準