【通関士】原産地規則の適用と手続

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どうも。Kenny(tsujikenzo)です。このシリーズでは、 第57回通関士試験の合格を目指す 「【通関士】通関士をめざして2023」 をお送りしております。学習のアウトプットをしています。

今日は17回目です。通関士試験指導「みこ会」メンバーです。好きな回転寿司の軍艦は、トリトンの海鮮切り落としです。

前回のふりかえり

前回は、【通関士】延滞税の免除と軽減措置、をお届けしました。

今回は、【通関士】原産地規則の適用と手続、をお届けします。

今日のアジェンダ

  • 原産地規則とは
  • 原産地基準
  • 原産地手続

原産地規則とは

原産地規則とは、貨物の原産地(=物品の「国籍」)を決定するためのルールのことです。

原産地規則は、経済連携協定や特恵関税の適用を判断して、輸入時の関税率を決定したり、貿易統計を取るために使用されます。

輸入時の関税を決定する

国際貿易において、輸入時の特別な関税などを決定するには、主に2種類の適用があります。

  1. 経済連携協定(EPA)などに基づく特恵税率を適用する
  2. 開発途上国を対象とした一般特恵関税(GSP)を適用する

どちらも「特恵」という単語が付いています。今更ですが、税率に関して特別に恵みを与える(与え合う)ということです。

これは、通常なら国際貿易には高い関税率が掛かるところ、両国で連携を取り合って関税率を低く抑え、国際貿易を発展させましょう、という狙いです。

EPAやGSPを適用するための原産地規則を、特恵原産地規則と呼びます。

貿易統計を取る

一方で、国際貿易は世界中で行われていますので、特恵関税の適用を受けない、通常の国際貿易もあります。

特恵関税がなくても、スムーズに取引ができるように、貿易統計を取ったり、WTO協定税率を適用させたりしています。

このような目的で、原産地を明らかにするための原産地規則を、非特恵原産地規則と呼びます。

通関士試験の対策

試験によく出るのは、特恵原産地規則です。

試験では、「経済連携協定(EPA)である」とか「特恵関税」というフレーズが出ますので、どちらの規則について問われているのか判断してください。

EPAだかGSPだかGPSだかよーわからんという方は、「経済連携協定かどうか」で覚えていただければと思います。 

原産地基準

原産地基準とは、どのような貨物が原産品と認められるかの基準です。

ここでクイズです。

Q.オーストラリアで生まれ育った牛を、オーストラリアで加工した牛肉の原産地はオーストラリアですが、第三国で収穫されたオリーブをオーストラリアに輸入して加工したオリーブ油の原産地は、どの国になるでしょうか。

答えは、、、オリーブ(7類)がオリーブ油(15類)となり、HSコードの類が変更になっているので、オーストラリアが原産地です。 

引用元:税関 原産地規則ポータル

このように、原産地基準にはいくつかのルールがあります。 

完全生産品

完全生産品とは、その商品が、特定の国または地域で完全に生産・取得された場合、その国が原産地として認められます。 

原産材料のみから生産される産品(EPA)

EPAでは、原産材料のみから生産される産品を、その国を原産地として認める原産地基準があります。

原産材料とは、生産された物品に使う、原材料のことです。

原材料は、一次材料、二次材料、三次材料と細かく分けてさかのぼると、二次材料以前のどこかに、第三国の原産品が混じっている可能性があります。

なので、EPAでは、原材料のことを原産材料または非原産材料として区別し、最終的にできあがった産品の原産地を認めています。 

上の図で、二次材料の砂糖と水がブルガリア産原料だったのが、シロップになるとオーストラリア産になっているのは、オーストラリアに輸入され、現地で加工され、HSコードの類が変更になったからです。

ちなみに、一般特恵関税(GSP)では、原産材料のみから生産される産品ルールはなく、次の実質的変更基準を満たす産品として原産地を決めます。

実質的変更基準を満たす産品

第三国の材料を使用し、生産したばあいであっても、実質的な変更(大幅な変更)があるばあいは、その国が原産地として認められます。

実質的変更基準は、加工工程基準、関税分類変更基準、付加価値基準の3つがあります。 

詳細は、次のブログで解説します。

原産地手続

原産地手続は、貨物の原産地を証明し、EPA税率などを適用するための手続きです。

特恵原産地規則では、EPAかGSPかによって、求められる原産地手続が異なります。地域によっては、「経由した港などの運送状況を証明したものを提出しないと原産地手続にならない」という厳しいものもあります。

まぁいろんな国の考えた方や外交政策がありますので、EPAに応じて、提出しなければいけない書類が違っていたりするのは、当然かと思います。

なお、非特恵原産地規則では、原産地証明書などの提出は求められません。貿易統計などと違い「より低い関税率を求めるならば!厳しく原産地を確認させてもらうよ!」という趣旨を、理解していただければと思います。 

ここでは、EPAとGSPに共通する第三者証明制度(原産地証明書)について、かんたんに説明します。

第三者証明制度(原産地証明書)

原産地手続における、第三者証明制度とは、商品の原産地を証明するための書類を、輸出国の権限ある機関が発行する「原産地証明書」によって、商品の原産地を証明する制度です。

この制度によって、信頼性と公正性が確保され、原産地の正確な証明が行われます。

経済連携協定(EPA)の原産地証明書発給機関一覧はこちらです。一般的には、輸出国の政府や公的機関、商工会議所などが発給します。(日本も同様です。)

経済連携協定の通関手続について : 税関 Japan Customs

また、一般特恵関税制度(GSP)における税関以外の原産地証明書発給機関はこちらです。

https://www.customs.go.jp/roo/procedure/gsp_hakkyuu.pdf

締約国原産地証明書と締約国原産品申告書

EPAを適用するために必要とされる原産地証明書等は、以下の3つの種類があります。

  • 締約国原産地証明書
  • 締約国原産品申告書
  • 認定輸出者が証明する原産地申告がされた文書

とくに、真ん中の、締約国原産品申告書は現地の公的機関じゃなくても生産者などでも作成できるというのが、試験によく出ます。 

もうひとつ、締約国原産地証明書は外国貨物を置くときに提出しないといけません(関税法施行令第36条の3)。これも試験によく出ます。

どのEPAで、どの書類を求められるかというのは、暗記する必要はないかなと思います。 

北海道から世界の食卓へ

実務上では、各国のシステムとNACCSを連携させた、原産地証明書のデータ交換の動きも早まっています。

わたしは、国際貿易のDX化により、さまざまな社会課題が解決できると信じています。

まとめ

以上で、【通関士】原産地規則の適用と手続、をお届けしました。

EPAについては、どの国とのEPAなのかは、試験対策として覚える必要はなく、各国EPAの共通項である原産地基準や、原産地手続についての知識を問われます。

次回もお楽しみに。

参考資料

このシリーズの目次

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