【通関士】原産地規則の実質的変更基準

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どうも。Kenny(tsujikenzo)です。このシリーズでは、 第57回通関士試験の合格を目指す 「【通関士】通関士をめざして2023」 をお送りしております。学習のアウトプットをしています。

今日は18回目です。通関士試験指導「みこ会」メンバーです。好きなお寿司の漫画は、将太の寿司です。

前回のふりかえり

前回は、【通関士】原産地規則の適用と手続、をお届けしました。

豪州生まれ豪州育ちの豪州産ビーフなら、原産地は非常にわかりやすいです。

さらに、複数ある原材料を、それぞれさかのぼって原産地を確認したところ、一次材料が豪州産のみなら原産地は豪州になると、これもわかりやすかったですね。

最後に残ったのは、商品(貨物)に、実質的な大幅な変更があるばあいは、その国を原産地にしよう、というルールです。 

今回は、【通関士】原産地規則の実質的変更基準、をお届けします。

今日のアジェンダ

  • 実質的変更基準とは
  • 加工工程基準
  • 関税分類変更基準
  • 付加価値基準
  • 品目別規制
  • 過去問対策

実質的変更基準とは

実質的変更とは、産品の生産において、輸入された材料に対して大きな変更が生じ、その結果として新たな産品が生産される状態をいいます。

また、この実質的変更が生じているかいないかという点に基づき、原産品であるかないかを判断する基準のことを、実質的変更基準と呼びます。

実質的変更基準の、全体像を確認しましょう。原則は、3つです。

下図にように「加工される」「HSコードが変わる」「生産により付加価値が向上する」という、3つのいずれかの変更が生じたばあい、実質的変更基準が満たされた、となります。 

原則を、ひとつずつ見ていきましょう。

加工工程基準

「材料」が「産品」になるときに、「大きな変更があった」ということは、モノが変わったということです。

モノが変わった、という状態は、以下の方法で表現できます。

  1. とある材料からとある産品への変更
  2. 加工の工程ルール

たとえば、「繊維から糸」という変更は、「紡績」という加工の工程ルールで呼ぶことができます。

このように表現することを、加工工程基準と呼びます。 

加工工程基準の問題

加工工程基準は、満たされれば実質的変更基準となりますので、わかりやすいです。

しかし、すべての品目に対して、加工の工程ルールを定めるのは、不可能です。世の中に工程は大量にありますし、技術も古くなったり新しくなったり、その変化が激しいからです。

そこで、加工工程基準に基づかずに、関税率表(HS品目表)を基準にしようというのが、次の基準です。

関税分類変更基準

関税率表は、世界中の品目を分類するための基準となっており、非常に広範な品目をカバーしています。

なので、関税率表の類や項が変更になれば、それは大幅な変更がなされた、とみなそうぜというアプローチです。

下図のように、HSコードの2桁(類)、4桁(項)、6桁(号)の変更に対応しています。

このように、HSコードの変更が生ずることとなる加工や生産が、ある1つの国で行われたばあい、できあがった産品は当該国の原産品であるとする基準を、関税分類変更基準と呼びます。 

関税分類変更基準の問題

では、関税分類変更基準で完璧かというと、必ずしもそうではありません。

なぜなら、袋詰めや切断のみなどの、かんたんな加工をほどこすだけで、HSコードが変わる品目もあるからです。 

そこで考えられたのが、品目表に対応した「かんたんな加工や工程は実質的な変更とみなしません。このような加工は認めます。」という工程の条件リストを作成して、実質的変更の基準としよう、というものです。

これを、品目別規則と呼びます。 

品目別規則については、後ほど解説します。

付加価値基準

最後に、もう一つあるのが、「モノが変わったということは、加工においてコストが投入されて、産品の価値が向上(または誕生)した」ということを、基準にする方法です。

これは、産品に含まれる材料の割合で原産地を決めるのではなく、価値(価格)の割合で決めようというものです。

他国から輸入される非原産材料の価値は、CIF価格で決定されます。

そして、A国で加工するときのコスト(人件費、運送費、製造管理費など)を足すと、最終的に産品が持っている価値の割合が出せる、という考え方です。

ちなみに、最終産品が持っている価値は、(わたしたち輸入者目線で言うと)FOB価格で決定します。 

上図でA国が原産地となっている産品は、い)ではなくろ)なのが、わかると思います。

このように、どれくらい価値が付加されたのか、最終的な産品の価値の割合を原産地の基準とする方法を、付加価値基準と呼びます。

付加価値基準の問題と試験対策

厳密に言うと、EPAによって付加価値基準のルールが異なり(非原産材料をCIFでなくEXWにするなど)、かなり複雑です。

試験対策としては、非原産材料(与えられる表から計算)、最終産品(FOB価格、問題文中にある)、基準となる価値の割合(計算式)、この3つを抑えるといいでしょう。(例外もあると思います。ご了承ください)

そして試験では、関税分類変更基準と同様に、付加価値基準も品目別規則を参照しながら、実質的変更基準を判断します。

品目別規則

これまで、実質的変更基準の3つの原則(加工、HSコード、付加価値)を、みてきました。

この原則に基づき、どのような生産工程を経れば、原産品と認められるかということを個別に考えます。

しかし、生産工程や非原産材料に付加される価格の割合などは膨大に種類があるため、原則のままでは、なかなか原産地を決められません。

そこで、品目別に生産工程や非原産品割合をルールとして定めたものが、品目別規則です。 

ちなみに、品目別規則は、関税暫定措置法施行規則で定めらています。

試験対策

なので、試験で原産地規則を問われたばあいは、まず品目別規則を確認し、肢(問題)が原産品としての資格の条件を満たしているかを照らし合わせます。

品目別規則に、基準に関する言及がなければ、原則をあてはめて原産品かどうか判断する、という流れです。

それでは、いくつか過去問を解いてみましょう。

過去問対策

過去問は、いくつかのパターンに分けることができます。無限にあるわけではありません。安心してください。

加工工程基準パターン

第52回 実務 第6問では、加工工程基準の知識が問われました。 

肢1から順に、品目別規則(関税暫定措置法施行規則別表(第9条関係)(抜すい)のこと)を見ていきましょう。

第61類は、紡織(ぼうしょく)用繊維の織物類または編物からの製造をしていれば、その国が原産地と言えます。 

なので、肢1は、綿から(綿→糸→生地は省略)衣類という加工工程基準を満たしているので、その国が原産地です。

肢2も同様ですね。

肢3は第63類です。

化学品、第47.01項から第47.06項まで若しくは第50.01項に該当する物品、紡織用天然繊維(生糸を除く。)、 人造繊維の短繊維又は紡織用繊維くずからの製造される必要がありますが、半合成繊維の長繊維の糸(第54.03項)から製造されているので、条件をみたしません。

肢4も第63類です。

肢3と同様に、合成繊維の紡績糸(55.09項)から製造しているので、条件をみたしません。

肢5は第62類です。

条件は第61類と同様です。絹織物(第50.07)から衣類を製造しているので、条件をみたします。

関税分類変更基準パターン

第55回 実務 第7問では、関税分類変更基準の知識が問われました。 

この問題は、品目別規則がありません。なので、原則のルールのみで考えよう、という問題です。

このような問題では、まず、問題文と下表の説明をよく読みます。

問題文と下表

問題文と下表からは、以下が読み取れます。

  • これは架空のA国と結んでいるEPAによる原産地規則のお話
  • このEPAでは、通則3(b)(割合でなく重要度)で決定するセットは、すべての構成要素が原産品なら、A国が原産品である
  • 材料の品目により、品目別原産地規則がある
  • トマトスパゲティセットの材料と品目分類をすべて示した
  • 最終産品のトマトスパゲティセットが、A国を原産地とするために、原産材料がA国となっている組みあわせ(選択肢)はどれか

問題を解くためには、トマトピューレーはA国の原産材料なのか、玉ねぎは?オリーブオイルは?というふうに、それぞれの原産材料がA国を原産地とするかを考えるのが普通です。

ここで、決定的となるのが、下表2の品目別原産地規則です。

下表2の品目別原産地規則

下表2によると、スパゲッティ(19.02)の品目別原産地規則として、「他の類の材料から変更」とあります。

小麦粉(11.01)と塩(25.01)から、スパゲッティ(19.02)を作っていますので、スパゲッティは、A国が原産地として認められます。

これは、類の変更が起きる、関税分類変更基準ですね。

そして、トマトソース(21.03)は、第20類(トマトピューレー)の材料がA国なら、A国が原産地として認められます。

つまり、選択肢の1、3、5が正解です。

別の問題も、みてみましょう。

第53回 実務 第6問でも、関税分類変更基準の知識が問われました。 

この問題では、品目別規則がありました。

問題文と品目別規則

問題文と品目別規則からは、以下が読み取れます。

  • これは、架空のA国を対象とした、一般特恵関税(GSP)のお話
  • 品目別規則の、原産品として資格を与える条件を読み、選択肢を「原産品」「非原産品」に振り分けなさい

1つずつみていきましょう。

肢1、調整した果実と砂糖からなる産品(20.06)の判定。20.06は、第7~9類、12類、17類、20類以外から製造しなければならない。8類や17類からおもいっきり製造してしまっているので、原産品にはならない。

肢2、これも8類から製造しているので、、、と思いますが、果実がA国で生産されているので、「完全生産品」です。豪州産まれの豪州育ちの豪州牛は豪州肉です。

肢3、これも7類や8類から製造してるので、、、と思いますが、8類はA国産ですし、7類は日本産なので(自国関与物産と呼びます)、「完全生産品」とみなします。

肢4、20類から製造してしまっているので、原産品になりません。ぶどうがA国産だったら、完全生産品になったのですがね。

肢5、11類から製造してしまっているので、原産品になりません。原料の一部に、非原産材料が入っているので、完全生産品でもありません。惜しい・・・。

付加価値基準パターン

第56回 実務 第6問では、付加価値基準の知識が問われました。 

この問題は、見たことない計算式やアルファベットが出てきて、びっくりしますが、産品の価値(価格)の割合で原産地を決めようという話だということがわかれば安心です。 

泡を食わないように(じっじ談)、問題と下表をよく読みましょう。

問題文と下表

問題文と下表からは、以下が読み取れます。

  • 架空のX国とのEPAなんだな
  • 下表2のAからEは原材料の価格で、これを全部足すと産品(Y)ができる
  • YのFOBは2000円
  • 肢では、AからEがXの原産材料だったり、非原産材料だったりするのね
  • 下表1の原産地規則からは、「原産材料割合が50%以上なら、X国産とする」ってのがわかる。これ最重要ポイントだな。
  • 原産品ではないものはどれか。こういうケアレスミスをしないようにしないとな。

1つずつみていきましょう。

肢1、X国の原産材料でない原材料(非原産材料)の合計は、1250円。式:(2000円ー1250円)÷ 2000円 = 37.5%。非原産品。

肢2、X国の原産材料でない原材料(非原産材料)の合計は、750円。式:(2000円ー750円)÷ 2000円 = 62.5%。原産品だ。

肢3、非原産材料は950円。式:(2000円ー950円)÷ 2000円 = 52.5%。これも原産品。

肢4、省略。式:(2000円ー1200円←非原産材料)÷ 2000円 = 40%。非原産品。

肢5、(2000円ー1050円←非)÷ 2000円 = 47.5%。非。

正解は、1、4、5

まとめ

以上で、【通関士】原産地規則の実質的変更基準、をお届けしました。

過去問を紹介したので、とってもボリュームが出ました。

今回考察した内容以外にも、例外はあると思いますが、時間切れでございます。原産地規則を捨て問にせずに、1点でも取れれば御の字です。

いよいよ本試験ですね。

次回は「合格体験記」、になるといいな。

参考資料

このシリーズの目次

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