【通関士】課税価格を極めよう 価格決定の構造とインコタームズ

通関士試験通関士

どうも。ケニー(ケニー🚢第58回通関士試験チャレンジ中)です。このシリーズでは、通関士試験に合格するための知識や攻略法について、受験生目線でアウトプットしています。

通関士試験指導「みこ会」メンバーです。好きなお寿司のネタは、時しらずです。

前回のふりかえり

前回は、売買契約と輸入取引における買手と売手、をお届けしました。

今回は、「価格決定の構造とインコタームズ」をお届けします。

価格決定の構造

輸出であれ輸入であれ、売買契約では、価格を決める必要があります。

では、価格はどのように決まるのでしょうか。

建値と諸掛

商品には必ず、基本となる原価があります。(水産物でいうと浜値というやつです)

基本原価に、諸掛(しょがかり・後ほど説明します)や営業費などの経費に粗利益を上乗せしたものが、販売価格となります。

この販売価格のことを、建値(たてね)と言います。

業界によって、小売店の販売価格をメーカーが指定することを建値と呼んだり、メーカーから卸売業者に販売する価格を建値と呼んだりするので、注意が必要です。 

輸出入取引における諸掛

輸出入取引における諸掛とは、販売や営業費をのぞく、貨物引取料や倉庫保管料や輸送費などの必要経費です。 

課税価格の決定では、以下の点を理解しているかどうかを問われます。

  • 貨物の引き渡し条件はどの時点か
  • 諸掛を負担したのは売手か買手か
  • インボイスに諸掛が計上されているか
  • 諸掛の具体的な金額は明らかであるか
  • 他にもあるかも(今思いつかない)

「買手が負担した輸出船積みされる前の倉庫保管料は課税価格に算入される」という暗記勉強は辛いです。。。

インコタームズ

輸出であれ輸入であれ、売買契約では、貨物の受渡し条件を決める必要があります。

では、貨物の受渡し条件はどのように決めるのでしょうか。

貨物の受渡し条件

貿易取引における受渡し条件とは、以下の6項目を決めることです。※暗記する必要はありません。

  1. 受渡しの場所
  2. 受渡し方法
  3. 受渡し時期
  4. 仕向地
  5. 分割船積みの可否
  6. 貨物の積替えの可否

この受渡し条件は、通常、インコタームズで定められています。

インコタームズとは

インコタームズ(Incoterms)は、国際商取引において商品の売買契約で用いられる、貿易条件の標準ルールを定めたものです。

国際商業会議所(ICC)によって定められており、商品の輸送、保険、通関、リスクの負担点などを明確にし、売主と買主の双方の責任を規定しています。

単に貿易条件の標準ルールなので、国際的な法律や国際条約ではありません。

売主と買主で「インコタームズに同意・準拠して取引をしましょうね」という合意を交わすと便利だね、という話です。

では、インコタームズで定められている貿易条件を見てみましょう。

2020年版インコタームズの条件

インコタームズは日々進化しています。輸送手段や法律などの社会の変化に合わせ(る努力がなされ)ています。

最新のインコタームズでは、貿易条件を、輸送手段により2グループで分けています。

  • グループ1:いかなる単一または輸送手段にも適した規則
  • グループ2:海上および内陸水路輸送のための規則

そして、売手と買手の責任とリスクの移転点が異なることに基づいて、E、F、C、Dの4条件を分類しています。

  • E類型:出荷条件
  • F類型:主要輸送費買主負担条件
  • C類型:主要輸送費込条件
  • D類型:到着条件

全体的には11種類の定型取引条件を、定めています。

類型インコタームズ説明
グループ1
E類型EXW (Ex Works)工場渡し。売主は自社工場または倉庫で商品を買主に提供する。売主は商品の輸出入手続きに責任を負いません。
F類型FCA (Free Carrier)運送人渡し。売主は指定された場所で、商品を運送人に引き渡します。
C類型CPT (Carriage Paid To)運賃支払渡し。売主は目的地までの運賃を支払い、商品を運送人に引き渡しますが、運送人に引き渡した時点で買主にリスクが移転します。
CIP (Carriage and Insurance Paid To)運賃保険料支払渡し。CPT条件に加えて、売主は目的地までの運送保険も手配します。
D類型DAP (Delivered At Place)目的地渡し。売主は指定された目的地で買主の指示に従い、輸入通関を行わずに商品を配送します。
DPU (Delivered at Place Unloaded)目的地で荷降ろし後渡し。売主は指定された目的地で商品を荷降ろし後に買主に引き渡します。
DDP (Delivered Duty Paid)関税込み配送済み。売主は目的地で商品を引き渡し、輸入通関手続きを含むすべての費用とリスクを負担します。
グループ2
F類型FAS (Free Alongside Ship )船側渡し。売主は商品を輸出港の船のそばで買主に引き渡します。
FOB (Free On Board)船上渡し。売主は輸出港で商品を船に積み込み、その時点でリスクが買主に移転します。
C類型CFR (Cost and Freight)運賃込み。FOB条件に加えて、売主は目的港までの運賃を支払います。
CIF (Cost, Insurance and Freight)運賃保険料込み。CFR条件に加えて、売主は目的港までの運送保険を手配します。

通関士試験対策としては、すべてを暗記する必要はありません。

E、F、C、Dの4つの分類を理解するだけでもいいと思います。また、CIF価格、DPU価格という意味を理解しましょう。

ちなみに、インコタームズ2020から、「条件」ではなく「規則」と呼ぶようになりました。「EXW規則」や「FOB規則」のように。

インボイスには「FOB Yokohama」など、規則と受渡し場所が明記されることがあります。

まとめ

以上で、価格決定の構造とインコタームズをお届けしました。

「建てる」という言葉には「立てる」や「確立する」という意味があります。「価格を建てる」とは、その価格を設定し確立する、という意味です。

インコタームズは、通関士試験では、EXW規則がよく出題されますね。

倉庫から買手に引き渡されたあとに、さまざまな諸掛が発生した方が、試験を作る側としてもワクワクしますからですね。(そんな理由なのか?)

次回もお楽しみに。

参考資料

  • 貿易実務ハンドブック 日本貿易実務検定協会
  • 建てるとは ChatGPT

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このシリーズの目次 第58回

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