どうも。ケニー(ケニー🚢第58回通関士試験チャレンジ中)です。このシリーズでは、通関士試験に合格するための知識や攻略法について、受験生目線でアウトプットしています。
通関士試験指導「みこ会」メンバーです。好きなお寿司のネタは、赤貝です。
今日のテーマは「課税価格を極めよう 現実支払価格」です。
前回のふりかえり
前回は、課税価格を極めよう 原則と例外、をお届けしました。
課税価格の決定の原則は、「現実支払価格+限定列挙の加算要素」でしたね。
今回は、課税価格を極めよう 現実支払価格の加算と控除、をお届けします。
今日のアジェンダ
- 現実支払価格とは
- 現実支払価格の加算費用
- 現実支払価格の控除費用
現実支払価格とは
関税定率法施行令第一条の四で、輸入貨物につき現実に支払われた(支払われるべき)価格が、定義されています。略して現実支払価格ですね。
現実支払価格は、輸入貨物につき支払われた価格です。通常は仕入書(以降、インボイスと呼びます)で支払わます。
しかし、以下のようなケースは、現実支払価格がインボイス価格と異なる可能性があります。
- 割増金や契約料等の支払い
- 売手の債務の弁済
- 売手と買手間の債務の相殺
- 価格調整条項の適用
- 仕入書価格に含まれる特定費用の控除
本来は、「輸入貨物について支払われた金額」を明らかにしないといけないのに、インボイスでは「過去の借金をチャラにするからインボイスから差し引きしておくね」や「割増金が発生してるけどインボイスには掲載しないからね」などが行われます。これは関税を低くして納税を逃れるためです。
意図したかどうかは別です(この辺が争われた過去の裁判はおもしろいです)。
現実支払価格がインボイス価格と異なるわけですので、正しく計算するために、現実支払価格”そのもの”に加算や控除を行わなければなりません。
現実支払価格の加算費用
現実支払価格の加算費用は、関税定率法基本通達4-2(3)イ~ハで、定められています。
3つしかありません。
割増金や契約料等の支払い
輸入貨物の取引において割増金や契約料が支払われる場合、インボイス価格に加算されます。
税関としては、輸入される貨物に関する具体的な取引の状況を検討しますし、輸入取引に関連する契約書や、インボイスに記載されている条項を精査することもあるでしょう。
極端な話ですが、「商品代金ゼロ円。輸入貨物の取引顧問契約100万円。だから関税は0円で。」とはならないということです。
「あなたの輸入貨物の代金は100万円です。5%の5万円を関税として払いなさい」となるわけです。(数値は適当な例えです)
売手の債務の弁済
売手が第三者に対して負っている債務を買手が弁済する場合、この弁済額はインボイス価格に加算されます。
売手(例えばアメリカのアパレル輸出業者)が、第三者(例えば日本の三井住友銀行)に100万円の借金があるとします。
買手(ケニー株式会社)が、三井住友銀行にその100万円を返済(弁済)、商品代金をゼロ円で輸入する。「だからケニーの関税は0円で。」とはならないということです。
「ケニーの輸入貨物の代金は100万円。5%の5万円を関税として払いなさい」となるわけです。
売手と買手間の債務の相殺
売手が買手に対して負っている債務を輸入貨物の価格と相殺する場合、相殺額はインボイス価格に加算されます。
過去の取引において、売手が、買手に100万円の借金があるとします。
その100万円を相殺するので、商品代金をゼロ円で輸入する。「だから関税は0円で。」とはならないということです。
以下、省略。
現実支払価格の控除費用
現実支払価格の控除費用は、関税定率法施行令第一条の四第1~4号で、定められています。
4つしかありません。
- 課税物件確定の時の属する日以後に行われる、輸入貨物に係る据付け、組立て、整備、または技術指導に要する役務の費用
- 輸入貨物の、輸入港到着後の運賃、保険料
- 輸入貨物に課される、関税その他の公課
- 延払条件付取引(通常の支払時期よりも支払いを遅くするという取引条件)である場合における、延払金利
ポイントは、この4つがインボイスに含まれていたら控除しなければならないということです。
インボイスに含まれていないばあいや、明らかにできないばあいは、無視します。
据付(すえつけ)けついて
据付けとは、置いて動かないようにするという意味です。
関税定率法基本通達4-2(2)イでは、以下のように定められております。
「据付け」に要する役務の費用は、輸入貨物の据付作業の一環として、当該輸入貨物の輸入前に、本邦において行われる役務(例えば、据付用土台の設置作業)の費用を含む。
つまり、基本は「輸入後に行われる据付け費用は控除する」ですが、「輸入前に行わる据付用土台の設置作業費用なんかも控除する」ということです。
まとめ
以上で、「課税価格を極めよう 課税価格を極めよう 現実支払価格の加算と控除」をお届けしました。
現実支払価格への加算は3つ、控除は4つでした。
さらに、「据付け」に着目して、輸入貨物の価格を決定するための基準って奥が深いんだなという例を挙げました。
輸入貨物の価格の決定は、世界中で関税評価協定(Customs Valuation Agreement)が運用されているほどで、網羅するのは不可能です。
暗記ではなく、あ、こういう考え方なんだな、というのを理解できるといいですね。
次回もお楽しみに。
このシリーズの目次 第57回
- 【通関士】資格勉強の学習計画
- 【通関士】行政と行政手続
- 【通関士】内閣大臣と大忙しの税関長
- 【通関士】税関長による行政処分
- 【通関士】通関士の役割と税関長の許可・承認
- 【通関士】通関書類の作成および通関実務の学習ポイント
- 【通関士】課税標準と端数処理
- 【通関士】関税額の計算の基本と応用
- 【通関士】修正申告と更正と延滞税と過少申告加算税
- 【通関士】貨物の品目分類とHS条約
- 【通関士】関税率表の解釈に関する通則と所属の決定
- 【通関士】貿易と船と海の話
- 【通関士】輸入時の関税納付のポイント(全体像編)
- 【通関士】課税物件確定の時期と適用法令
- 【通関士】納税義務
- 【通関士】延滞税の免除と軽減措置
- 【通関士】原産地規則の適用と手続
- 【通関士】原産地規則の実質的変更基準