どうも。つじけ(tsujikenzo)です。このシリーズでは、2022年5月から始まりました「ノンプロ研インストラクション講座1期」について、全6回程度でお届けします。今日はDay3です。
前回のおさらい
前回は、「学習のメカニズムと原則」についてお届けしました。
今日は、「講座づくりのプロセス」についてお届けします。
今日のアジェンダ
- 講座づくりのプロセス
- 分析
- 評価
アイスブレイク
講座では、毎回アイスブレイク(ブレイクアウトルームに分かれて各自、自己紹介などを行う時間)を設けています。
毎回、アイスブレイクで発表するお題を提示されるのですが、実はこの「お題」に重要なヒントが隠されています。
Day3のお題は以下でした。
- 自己紹介「~です。実は…」
- わたしの仕事のダンドリ術
広辞苑によると、「段取り」とは、3つの意味があるようです。
- 芝居などで、筋の運びや組立て。花暦八笑人「初手がきたなくつて、ぐつときれい事になるといふもんだから―はびつくりだらう」
- 事の順序・方法を定めること。「仕事の―をつける」
- 心がまえをすること。工夫すること。
わたしの知識だと、2番目の「順序を定めること」だとばかり思っていました。
しかし、 「心がまえをすること。工夫すること。」 という意味もあるのですね。
仕事をなんのためにやるのか、あるべき姿はどうなのか、その辺を意識するしないで、成果も変わってきます。
そんなメッセージが込められた、アイスブレイクだと思いました。
講座づくりのプロセス
効率的な教授法や講座の作り方などを実現する、ADDIEモデルという、講座づくりのプロセスのモデルがあります。
講座は、カリキュラムを作成して実施するだけでは、いい結果を得られません。
受講生のターゲットを明確にし、講座を行ったあとは必ず、講座を評価する必要があります。
ADDIEモデルは、PDCAサイクルのように、回し続けることで、教える場の効果・効率・魅力を向上させます。
後半のセクションでは、1番目の「分析」と、5番目の「評価」について、詳しくお届けします。
分析
一度建築したら、半世紀以上は取り壊さない日本人の住居と、遊牧民族の住居のデザインは異なります。
講座を最適にデザインするため、まず、ターゲットと目的を明らかにしましょう。
ターゲットには、2つのパターンがあります。
- 受講生があらかじめ決まっている、新人研修など
- 受講生はあとで集める、講座など
講座は、お知らせを流せば、勝手に受講生が集まるわけではないので、あらかじめターゲットを決めなければなりません。
マーケティング用語の「ペルソナ」は、ターゲットの属性(年齢、性別、職業、収入など)を細かく設定し、消費行動やトレンドを分析します。
しかし、同じ属性の人が、必ずしも同じ学習をしたいとは言えないので、ペルソナは導入コストが高いです。(みなさんのまわりでも、自分と同じ属性の人が、VBAやPythonを勉強したいと必ず思ってるとは言えないはずです。)
なので、オススメは 「過去の自分」もしくは「すぐ身近にいる特定の誰か」 を、ターゲットに設定することです。
受講生の目的はバラバラ
あなたがパソコン教室でスマホ講座を開くとします。受講生の目的はバラバラです。
- 電話や写真などの基本操作を覚えたい
- LINEを使えるようになりたい
- 買い物ができるようになりたい
- SNSに投稿したり世界中の人とつながってみたい
これらすべての目的に合わせて講座を設計すると、破綻します。
目的を決めるステップ
なので、以下のステップで目的を決めます。
- ターゲット(Aさん)を決める
- その人がなるべき姿を想定する
- なるべき姿になるための課題解決方法に、他者関与が有効かを考える
まず、ターゲットとなるAさんを決めたら、Aさんがなるべき姿を想定します。なるべき姿とは、組織でのポジションであったり、行動の変化だったり、さまざまです。
Aさんは、なるべき姿に向かって独学で学習をはじめるわけですが、スキルの習得に1年掛かったとします。
しかし、独学ではなく、学習に他者の関与があれば、6カ月で習得できたかもしれません。
その、「他者の関与」をもたらす装置が講座であり、「なるべき姿」が講座の目的です。
わたしの感覚ですが、「なるべき姿」とは、特定の操作を覚えることではなく、「自分で考えて行動できる姿」 なのかなと思っています。
以下のような姿になっていれば、講座の目的を達成したと言えるでしょう。
- 学習を自分事としてとらえることができる
- わからないときにどうやって調べるか知っている
- 得た知識を次の人に教えることができる
「次の講師・TAを輩出する」というのは、わかりやすい転移かもしれません。
評価
ADDIEモデルでは、評価は5番目に位置しますが、すべての講座が終了したあとに行うわけではなく、常に評価して改善を行います。
そして、(わたし的に強めに言うと)講座の評価とは、 事後アンケートを取って満足度のデータを取ること、ではありません。
むしろ、事後アンケートでは、「受講生の満足度の平均」や「受講生の満足度の変化」が取れるだけです。
4つの観点
評価は、以下の4つの観点があります。
- いつ(全体終了後だけでなく、事前課題後や毎週も)
- 誰から(受講生だけでなく、TAや上司なども)
- 何を(達成度とモチベーション)
- どれくらい(評価できるか)
たとえば、「受講生の達成度を評価する」というばめんです。達成度にもレベルがあります。
講座中、講座にも満足していて、講座内容も習得していて、いざ、 「受講生が実践できているか」 の達成度を評価するばめんがあると思います。
そのようなときは、アンケートではなく、 「卒業LTを発表できるか」 で評価します。
ほかにも、「受講生のモチベーションを評価する」というばめんです。モチベーションもちゃんと科学できます。
このARCSモデルをつかって、どのように評価するかというと、 受講生の観察 です。
つじけ流ですが、 「受講生モチベーションチェックシート」 を作成して、定期的に講座を評価してみようと思いました。
高度な評価
カートパトリックの4段階評価では、レベルが高いほど評価は実現しづらいということでした。
そこで、レベル4の「貢献したか」を測定するため、「サクセスケースメソッド」という、インタビューにもとづく定性的な効果測定を行う手法があります。
受講生のなかから、「もっとも成功した人」と「もっとも失敗した人」に着目し、その理由を探るものです。
なぜ、そこまでやらないといけないのか、については、中原先生のこちらのブログが非常に参考になりました。
「企業内教育における評価」は、「学習効果を知る」だけが目的ではありません。「学習効果をもって、未来をつくること」が目的なのです。
まとめ
以上で、「講座づくりのプロセス」をお送りしました。
インストラクショナルデザインでは、「誰かになにかを教えたい」という動機で、講座を設計することはありません。
あくまで、ニーズがあるから講座が成り立ちます。
大切なのは、講座の目的をしっかり定めること、目的に必要な評価を行うことです。
この軸がぶれなければ、事後アンケートに一喜一憂することもなくなりそうですね。
次回は、「空間と時間の設計」をお届けします。お楽しみに。