[ノンプロ研]インストラクション講座1期Day3講座づくりのプロセス

id03インストラクション講座

どうも。つじけ(tsujikenzo)です。このシリーズでは、2022年5月から始まりました「ノンプロ研インストラクション講座1期」について、全6回程度でお届けします。今日はDay3です。

前回のおさらい

前回は、「学習のメカニズムと原則」についてお届けしました。

今日は、「講座づくりのプロセス」についてお届けします。

今日のアジェンダ

  1. 講座づくりのプロセス
  2. 分析
  3. 評価

アイスブレイク

講座では、毎回アイスブレイク(ブレイクアウトルームに分かれて各自、自己紹介などを行う時間)を設けています。

毎回、アイスブレイクで発表するお題を提示されるのですが、実はこの「お題」に重要なヒントが隠されています。

Day3のお題は以下でした。

  • 自己紹介「~です。実は…」
  • わたしの仕事のダンドリ術

広辞苑によると、「段取り」とは、3つの意味があるようです。

  1. 芝居などで、筋の運びや組立て。花暦八笑人「初手がきたなくつて、ぐつときれい事になるといふもんだから―はびつくりだらう」
  2. 事の順序・方法を定めること。「仕事の―をつける」
  3. 心がまえをすること。工夫すること。

わたしの知識だと、2番目の「順序を定めること」だとばかり思っていました。

しかし、 「心がまえをすること。工夫すること。」 という意味もあるのですね。

仕事をなんのためにやるのかあるべき姿はどうなのか、その辺を意識するしないで、成果も変わってきます。

そんなメッセージが込められた、アイスブレイクだと思いました。

講座づくりのプロセス

効率的な教授法や講座の作り方などを実現する、ADDIEモデルという、講座づくりのプロセスのモデルがあります。 

講座は、カリキュラムを作成して実施するだけでは、いい結果を得られません。

受講生のターゲットを明確にし、講座を行ったあとは必ず、講座を評価する必要があります。

ADDIEモデルは、PDCAサイクルのように、回し続けることで、教える場の効果・効率・魅力を向上させます。

後半のセクションでは、1番目の「分析」と、5番目の「評価」について、詳しくお届けします。

分析

一度建築したら、半世紀以上は取り壊さない日本人の住居と、遊牧民族の住居のデザインは異なります。 

講座を最適にデザインするため、まず、ターゲットと目的を明らかにしましょう。

ターゲットには、2つのパターンがあります。

  1. 受講生があらかじめ決まっている、新人研修など
  2. 受講生はあとで集める、講座など

講座は、お知らせを流せば、勝手に受講生が集まるわけではないので、あらかじめターゲットを決めなければなりません。

マーケティング用語の「ペルソナ」は、ターゲットの属性(年齢、性別、職業、収入など)を細かく設定し、消費行動やトレンドを分析します。

しかし、同じ属性の人が、必ずしも同じ学習をしたいとは言えないので、ペルソナは導入コストが高いです。(みなさんのまわりでも、自分と同じ属性の人が、VBAやPythonを勉強したいと必ず思ってるとは言えないはずです。)

なので、オススメは 「過去の自分」もしくは「すぐ身近にいる特定の誰か」 を、ターゲットに設定することです。

受講生の目的はバラバラ

あなたがパソコン教室でスマホ講座を開くとします。受講生の目的はバラバラです。

  • 電話や写真などの基本操作を覚えたい
  • LINEを使えるようになりたい
  • 買い物ができるようになりたい
  • SNSに投稿したり世界中の人とつながってみたい

これらすべての目的に合わせて講座を設計すると、破綻します。

目的を決めるステップ

なので、以下のステップで目的を決めます。

  1. ターゲット(Aさん)を決める
  2. その人がなるべき姿を想定する
  3. なるべき姿になるための課題解決方法に、他者関与が有効かを考える

まず、ターゲットとなるAさんを決めたら、Aさんがなるべき姿を想定します。なるべき姿とは、組織でのポジションであったり、行動の変化だったり、さまざまです。

Aさんは、なるべき姿に向かって独学で学習をはじめるわけですが、スキルの習得に1年掛かったとします。

しかし、独学ではなく、学習に他者の関与があれば、6カ月で習得できたかもしれません。 

その、「他者の関与」をもたらす装置が講座であり、「なるべき姿」が講座の目的です。

わたしの感覚ですが、「なるべき姿」とは、特定の操作を覚えることではなく、「自分で考えて行動できる姿」 なのかなと思っています。

以下のような姿になっていれば、講座の目的を達成したと言えるでしょう。

  • 学習を自分事としてとらえることができる
  • わからないときにどうやって調べるか知っている
  • 得た知識を次の人に教えることができる

「次の講師・TAを輩出する」というのは、わかりやすい転移かもしれません。

評価

ADDIEモデルでは、評価は5番目に位置しますが、すべての講座が終了したあとに行うわけではなく、常に評価して改善を行います。

そして、(わたし的に強めに言うと)講座の評価とは、 事後アンケートを取って満足度のデータを取ること、ではありません

むしろ、事後アンケートでは、「受講生の満足度の平均」や「受講生の満足度の変化」が取れるだけです。

4つの観点

評価は、以下の4つの観点があります。

  • いつ(全体終了後だけでなく、事前課題後や毎週も)
  • 誰から(受講生だけでなく、TAや上司なども)
  • 何を(達成度とモチベーション)
  • どれくらい(評価できるか)

たとえば、「受講生の達成度を評価する」というばめんです。達成度にもレベルがあります。

講座中、講座にも満足していて、講座内容も習得していて、いざ、 「受講生が実践できているか」 の達成度を評価するばめんがあると思います。

そのようなときは、アンケートではなく、 「卒業LTを発表できるか」 で評価します。 

ほかにも、「受講生のモチベーションを評価する」というばめんです。モチベーションもちゃんと科学できます。 

このARCSモデルをつかって、どのように評価するかというと、 受講生の観察 です。

つじけ流ですが、 「受講生モチベーションチェックシート」 を作成して、定期的に講座を評価してみようと思いました。

高度な評価

カートパトリックの4段階評価では、レベルが高いほど評価は実現しづらいということでした。

そこで、レベル4の「貢献したか」を測定するため、「サクセスケースメソッド」という、インタビューにもとづく定性的な効果測定を行う手法があります。

受講生のなかから、「もっとも成功した人」と「もっとも失敗した人」に着目し、その理由を探るものです。

なぜ、そこまでやらないといけないのか、については、中原先生のこちらのブログが非常に参考になりました。

「企業内教育における評価」は、「学習効果を知る」だけが目的ではありません。「学習効果をもって、未来をつくること」が目的なのです。

数字と物語で評価せよ!:ASTD2008リアルタイム報告 | 立教大学 経営学部 中原淳研究室 - 大人の学びを科学する | NAKAHARA-LAB.net
立教大学 経営学部 中原淳研究室 中原 淳のブログです。経営学習・人的資源開発に関する研究知見、エッセイ、日々の日記が更新されています。

まとめ

以上で、「講座づくりのプロセス」をお送りしました。

インストラクショナルデザインでは、「誰かになにかを教えたい」という動機で、講座を設計することはありません。

あくまで、ニーズがあるから講座が成り立ちます。

大切なのは、講座の目的をしっかり定めること、目的に必要な評価を行うことです。

この軸がぶれなければ、事後アンケートに一喜一憂することもなくなりそうですね。

次回は、「空間と時間の設計」をお届けします。お楽しみに。

このシリーズの目次

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