【通関士】課税標準と端数処理

通関士試験通関士

どうも。Kenny(tsujikenzo)です。このシリーズでは、 第57回通関士試験の合格を目指す 「【通関士】通関士をめざして2023」 をお送りしております。学習のアウトプットをしています。

今日は7回目です。

前回のふりかえり

前回は、【通関士】通関書類の作成および通関実務の学習ポイント、をお届けしました。

今回は、【通関士】課税標準と端数処理、をお届けしします。

通関士は、「通関」と「関税」のプロであることを、お伝えしてきました。

具体的に、関税について、理解を深めていきたいと思います。

留意事項

この記事は、「納付すべき税」という言葉が、単に計算結果のことを指すのか、端数処理を行った納付税額の確定を指すのか、を考察したものです。

記事内で「関税納付額」や「消費税納付額」という言葉を使用しておりますが、わたしが作った言葉であることをご留意ください。

今日のアジェンダ

  • 課税とは
  • 端数処理

課税とは

○○税(消費税、所得税、関税など)という税金を課することを、課税といいます。

課税されるための必要条件や基準を、課税要件といいます。

たとえば、消費税でいうと、消費税の課税要件を満たしている取引は課税になりますが、満たしていないばあいは不課税になります。

さらに、非課税取引として限定列挙されている取引であれば、非課税となります。 

この「課税要件」や、この後に紹介する「課税標準」という言葉は、関税に限らずさまざまな税に関する実務で登場しますので、覚えておきましょう。

関税における課税要件とタイミングのルール

輸入時の関税納付において、重要なポイントは、「課税要件の4つ」と「タイミングのルール3つ」です。

それぞれ、関税法や関税定率法で定められています。

課税要件関連法案説明
納税義務者関税法第6条関税は、この法律又は関税定率法その他関税に関する法律に別段の規定がある場合を除く外、貨物を輸入する者が、これを納める義務がある。
課税物件関税法第3条輸入貨物(信書を除く。)には、この法律及び関税定率法その他関税に関する法律により、関税を課する。ただし、条約中に関税について特別の規定があるときは、当該規定による。
課税標準関税定率法第3条関税は、輸入貨物の価格又は数量を課税標準として課するものとし、その税率は、別表による。
税率関税定率法第3条関税は、輸入貨物の価格又は数量を課税標準として課するものとし、その税率は、別表による。
課税物件確定の時期関税法第4条関税を課する場合の基礎となる貨物の性質及び数量は、当該貨物の輸入申告の時における現況による。ただし、次の各号に掲げるものについては、当該各号に定める時における現況による。
適用法令関税法第5条関税を課する場合(関税定率法第七条第十項(相殺関税)並びに第八条第九項第二号及び第十八項(不当廉売関税)の規定により担保の提供を命ずる場合を含む。)に適用する法令は、輸入申告の日において適用される法令による。ただし、次の各号に掲げる貨物については、当該各号に定める日において適用される法令による。
納付期限関税法第12条第9項または第14条第5項、第9条[法定納期限]
第一項及び第十一項第一号において「法定納期限」とは、当該関税を課される貨物を輸入する日(輸入の許可を受ける貨物については、当該許可の日)とする。ただし、次の各号に掲げる関税については、当該各号に定める期限又は日(第三号又は第四号に掲げる関税につき当該各号の書類が二回以上にわたつて発せられた場合には、その最初に発せられた日)とする。
第一号に掲げる事由が生じた場合において、第二号に掲げる事由に基づいてする関税についての更正、決定又は賦課決定は、前各項の規定にかかわらず、同号の特恵受益国等の権限ある当局等に対し同号の要請に係る書面が発せられた日から三年を経過する日まで、することができる。

[納期限]
納税申告をした者は、次項の規定に該当する場合を除き、その申告に係る書面又は更正通知書に記載された納付すべき税額に相当する関税を、当該申告に係る貨物を輸入する日までに国に納付しなければならない。

課税物件と適用法令で決まる、関税額の計算基準となる課税額(もしくは数量)のことを「課税標準」と呼びます。とくに、課税標準納付期限を理解することは、通関業務における最重要課題になります。 

主な税における課税標準

通関士試験の出題範囲における、主な税の課税標準を整理しました。

目的の税額を求めるとき、なにを課税標準とするのかを理解することは、基礎学力UPにつながると思います。 

端数処理

輸入貨物について納付すべき関税額、消費税額および地方消費税額は、次のように計算します。 

納付税額の端数処理

しかしながら、計算した税額納付すべき税額は、必ずしも一緒ではありません。なぜなら、税金を納付するばあいは、1円未満を切り捨てたり、百円未満を切り捨てたり、納税すべき税額の端数を処理することがあるからです。 

このように考えたとき、あくまで計算した結果を「端数処理前」、納付すべき税額を「端数処理後」と呼ぶことが理解できます。(テキストでよく出てくる表現です。)

申告の際は、必ず端数処理をしなければなりません。 とくに関税の納付時は、百円未満を切り捨てますので、納付税額の下2桁の数字は、必ず「00」となる、と覚えておきましょう。 

納付すべき税額を計算するばあいに端数処理を行うのは、税負担の公平を損なわない限度に、計算の簡易化が図られているからです。

合算前は端数処理を行わない

統計品目番号が異なる複数の品目を、1回の申告で輸入するばあいは、各品目の計算結果を端数処理せず、合算した後に百円未満切り捨てします。 

これは、関税、消費税、地方消費税でも同じ考え方なので、理解しておきましょう。

課税標準の端数処理

端数処理のルールを一覧にまとめてみました。無申告加算税は計算問題に出題されにくいですが、選択式問題などでは出る可能性があるので抑えていた方がいいでしょう。

関税額

関税額を計算するとき、課税標準(申告価格)の額が千円未満であるときは、全額切り捨てます。(つまり関税額が0円になる)

また、課税標準(申告価格)の額に千円未満の端数があるときは、切り捨てます。

関税額は、課税標準(千円未満切り捨て) x 税率で求めます。

納付税額の端数処理は、百円未満切り捨てです。なので、関税額の計算結果が百円未満のときは、納付税額は0円になります。

課税標準税額処理方法
申告価格関税千円未満切り捨て
各税の計算結果納付税百円未満切り捨て

消費税額

消費税を計算するとき、課税標準(申告価格+関税納付額)は、千円未満切り捨てます。

消費税は、課税標準(千円未満切り捨て) x 消費税率で求めます。

納付税額の端数処理は、百円未満切り捨てです。

課税標準税額処理方法
申告価格+関税納付額消費税千円未満切り捨て
消費税の計算結果納付税百円未満切り捨て

地方消費税額

地方消費税額を計算するとき、課税標準(消費税額)は、百円未満切り捨てです。

地方消費税額は、課税標準(消費税納付額) x 22 ÷ 78で求めます。

納付税額の端数処理は、百円未満切り捨てです。

課税標準税額処理方法
消費税額地方消費税百円未満切り捨て
地方消費税額の計算結果納付税百円未満切り捨て

延滞税

延滞税額を計算するとき、課税標準(関税額)は、1万円未満切り捨てです。

延滞税は、課税標準(1万円未満切り捨て) x 2.4% x 延滞日数 ÷ 365日で求めます。

納付税額の端数処理は、百円未満切り捨てです。

課税標準税額処理方法
関税額延滞税1万円未満切り捨て
延滞税額の計算結果納付税百円未満切り捨て

※納期期限から2か月を経過するものは年8.7%が課せられます。

過少申告加算税

過少申告加算税を計算するとき、課税標準(増差税額)は、1万円未満切り捨てです。

過少申告加算税は、課税標準(1万円未満切り捨て) x 10%で、通常分を求めます。

また、当初申告額と50万円のどちらか高い額より、増差税額が高いばあい、加重分が発生します。

加重分の課税標準(増差税額 – (当初申告額と50万円のどちらか高い額))は、1万円未満切り捨てです。

加重分は、課税標準 x 5%で求めます。

通常分 + 加重分を納付します。納付税額の端数処理は、百円未満切り捨てです。

課税標準税額処理方法
増差税額過少申告加算税(通常分)1万円未満切り捨て
増差税額 – 当初申告額と50万のどちらか高い方過少申告加算税(加重分)1万円未満切り捨て
通常分のみ納付税百円未満切り捨て
通常分 + 加重分納付税百円未満切り捨て

まとめ

以上で、【通関士】課税標準と端数処理、をお届けしました。

実務における端数処理は、とてもむずかしいと思います。端数処理を、できるだけ暗記分野としないよう、本質的に理解する工夫をしてみました。

しかしながら、わたしの認識不足により、結果として、よくわからない記事、より困惑させる内容になってしまっていたら大変申し訳ございません。

次回もお楽しみに。

参考資料

このシリーズの目次

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