どうも。つじけ(tsujikenzo)です。このシリーズでは、2022年5月から始まりました「ノンプロ研インストラクション講座1期」について、全6回程度でお届けします。今日はDay4です。
前回のおさらい
前回は、「講座づくりのプロセス」についてお届けしました。
講座づくりのプロセスとしてADDIEモデルを紹介しました。
ターゲットを明確にして、評価を繰り返すことが大事でした。
今日は、「空間と時間の設計」についてお届けします。
今日のアジェンダ
- 設計とは
- 空間の設計
- 時間の設計
設計とは
それでは、実際に、講座を設計していきましょう。
「設計」とは、「構造を決定し、その結果を設計図などとして表現すること」 です。
復習ですが、構造を決定するときに「適正な制約」を踏まえて、構造を決定することが大事です。
その適正な制約というのが、インストラクショナルデザイン(通称、ID)による制約です。
3つの制約は、すでに授業で習いました。もし、忘れたばあいはテキストを見直しながら、設計していきましょう。
そして、学習の8つの原則(カンハンちゃんテキテキアサン学園)とともに、講座は開催されます。
設計の2つの次元
講座の設計はとても複雑になっていきますが、「学習の場」x「学習の時間」という、2つの次元で考えると、わかりやすいです。
まず、「実際に講座を行う場所」を1つの次元として、設計を考えます。
TA(ティーチングアシスタント)やホスト(進行の補佐)は誰を選んだらいいのか、や、ビデオ通信は、どのアプリを選んだらいいのか、など、講座の空間を設計します。
そして、講座は単発ではなく、複数回に分けて行います。
講座と講座の間、受講生はどのような時間を過ごすのが効果的でしょうか。
「講座期間中の時間」をもう+1次元として、設計を考えましょう。
まとめますと、 「学習の場」x「学習の時間」に、IDによる制約をかけて、設計を行っていこうということです。
空間の設計
学習の場の設計では、4つのポイントが大切です。
- 関係者
- 場所
- ツール
- グランドルール
関係者
「関係者」は、学習の8つの原則でいうと「学習共同体」に関わってきます。
良い学習共同体をつくるためには、講師以外の運営メンバーや、受講者、受講者の周囲にいる人たちの「良い影響」が必要です。
なので、シンプルに、このように考えます。
- 良い影響を与える関係者を増やす
- 良くない影響を与える関係者を減らす
良い影響与える関係者として、設計しやすいのが、運営メンバー(TAとホスト)です。
TAは、一緒に学ぶおにいさんおねえさん的な存在ですが、「講師とは違う視点で、講座を評価する(できる)」という設計が有効です。
私の気付きですが、TAには、「受講者の宿題への解答を、自分なりに丁寧に答えてあげてください」など、具体的に指示するのもいいでしょう。
「講師をサポートしてください」だと、設計としては不十分かもしれません。
良くない影響を与える関係者は、受講者に(どうしても)紛れ込みます。
- 講座中に寝てる
- 課題を提出しない
- カメラをONにしない
- などなど
集団心理現象の1つに「リンゲルマン(無意識の手抜き)効果」というものがあります。人は、グループのサイズが大きくなるにつれて、その発揮する力が減少する、という現象です。
なので、「すべての人に平等にチャンスを与える」ではなく、「良い影響を与える関係者だけ」が集まるように設計すべきなのです。
※この辺が「教育」と「教育工学」の違いだと思いました。
これを設計する方法として、講座の申し込み時点で 「この講座は学習共同体であることを理解できる」 というチェック項目を設けます。
このチェック項目を、受講者が事前に読んだか読まなかったか、というのは、講座を評価しながら改善できます。
場所とツール
もし、わたしが講座を開催するなら、ZoomとSlackによるオンライン開催一択です。
設計しなければならないことはたくさんありますが、あとで説明する「時間の設計」と行ったり来たりしながら、設計します。
グランドルール
講座の進め方や、宿題の提出方法などは「グランドルール」として周知するように、設計します。
大切なことは、周知を徹底して、毎回行うことです。「なかなか伝わらないなぁ」ではなく、「伝わるまで伝える」努力が必要です。
時間の設計
講座を開催するときは、粒度によって、さまざまなスケジュールの単位があります。
事前におこなうこと
講座の前に提供される「事前課題」は、学習の関連づけだけでなく、「どんな受講生がいるのか」という探索行動(プロービングと呼びます)にもつながります。
プロービングは、モチベーションの評価モデルであるARCSモデルで評価できます。
また、各講義の事前におこなう、オープニングも大事です。
オープニングでは、OARR(オール)を握ることが大切です。
OARR | やること |
---|---|
Outcome | 目的の確認、関連づけ |
Agenda | スケジュールの確認 |
Role | 各人の役割を確認 |
Rule | グランドルールを共有 |
これは、必ず行いましょう。
事後におこなうこと
講座のあとの「ふりかえり」にあたる時間や場所を提供することは、より良い講座設計につながります。
全体の講座の最後には、卒業LTを開催し、各自で学んだことを5分程度で発表します。
大切なことは「卒業LTがありますよ」という事前アナウンスを徹底すること、かもしれません。
また、各講義のあとにおこなうクロージングも大事です。
打ち上げである「懇親会」も立派なクロージングです。「懇親会がある講座はいい講座」というアンケート結果も出ています(ノンプロ研調べ)。
懇親会から、講座を復習するもくもく会や、スピンオフ輪読会が企画されたりします。
また、「次のTAをやってみたいけど自信がないなぁ」という受講者の背中を押すこともできます。
受講者が参加しやすい懇親会を、設計してみましょう。
まとめ
以上で、「空間と時間の設計」をお送りしました。
講義を始めるときに、「講座中は休憩時間がありますので、後ろの扉から退出してください」というアナウンスをよく聞きます。
いままでは、「つまんない情報だな。早く本編をやって欲しいな」と思って聞き流していましたが、実は、「講座中に好き勝手に退出しないでね」という注意喚起、つまり 「講座をデザインしている」 と言えます。
良い講座を設計するために、グランドルールの周知は大事ですね。むしろ本編より大事かもしれません。
次回は、「メインアクティビティとカリキュラム」をお届けします。お楽しみに。